編み物は、できあがったオリジナルの作品を着ることができるのも楽しいけれど、なにより編んでいること自体が楽しい。夢中になれます。
時には中毒かと思うくらい、どこで手を休めていいのかわからなくなるくらい夢中になってしまうのはどうしてなのでしょうか。
今回は編み物が及ぼす心理的な作用、特に効果についてお話ししたいと思います。
編み物が脳トレにいいわけとは?
若いころからかぎ針編みが得意で、レース編みに夢中になっていた私の叔母は、80代後半の今でもアクリルたわしなどを大量に作って、友人知人にプレゼントしています。
その叔母の元気の源は、もしかしたら編み物ではないかと思えるほど。
多少背中が丸くなったことをのぞけば、頭の回転は速く、会話の反応も以前と変わりません。彼女を見ていると、やはり昔から手先のことをしているとボケないという話は本当かも知れないと思えます。
編み物をすると、脳の前頭前野が活性化するという説があります。
前頭前野が活発になると、やるきと集中力が高まり、自発的になり、人とのコミュニケーション能力も高くなるんですね。
「編む」という行為は、手と脳を連携させるテクニックが必要なので、目数を間違えないように計算したり、模様を再現しようとする行為が、脳をより緻密に働かせることになって、高齢者には特によい脳トレになります。
叔母が毎月のように旅行に誘われるのは、体力はもちろん、人に心配りのできる頭の働きと、人といることを心から楽しめる安定した精神の持ち主であることが大きいと思います。
編み物は心の安定にも良い影響を与えるんですね。
編み物に集中することは瞑想と同じ?
黙々と手を動かして編物をしていると、集中しているのだけどリラックスしている、という不思議な状態になります。身体的には、心拍数や血圧が下がったり、ストレスホルモンが減少したり。。
編み物をすると瞑想をしているのと同じような感覚になるというのは、セロトニンという脳内物質が分泌されてリラックスできるからと言われています。
瞑想が心身ともに良いというのはわかっていて、でも自分には難しいと考えている人には、手を動かして編むという行為が瞑想への入り口になるかもしれません。
人間の能力が一番発揮されやすい精神状態というのは、「今・ここ」に意識を集中させることができたとき。編み物などの繰り返しの動作は、瞑想のようなリラックス状態を自然と生み出してくれるのかもしれませんね。
編み物にはセラピー効果がある!?
編み物に没頭することでリラックス状態を生み出します。
人はリラックスしたときに潜在能力が引き出されます。
最近は、編み物による効果が多方面で利用されているようです。
たとえば、禁煙・ダイエット・記憶力改善など。
瞑想では得られない「達成感」というのもあります。
編み物は仕上げて形にすると完成します。完成させることができた自分に自信がつき、それがやるきにつながるからです。
アメリカの男性刑務所で、数年にわたり編み物を教えに通った女性の有名な話があります。
最初は拒絶していた囚人たちが、次第に編み物に夢中になり、それとともに彼らの言動も変わっていったとのこと。
集団生活を強いられる彼らが、編み物に集中することで自分だけの時間を持つことができ、それが精神の安定にもつながっていったようです。また、できあがったものを子供たちに送ったりしたことで達成感を得られ、それが自信になったことは間違いありません。
うつ病のひとや、慢性的に体に痛みのある人にも、編み物は効果があるようです。
うつ病の人は、編み物をすることで幸せな感情がわき、痛みのある人は、「意識」が編むことに集中するので、その間は痛みに意識がいかないため。
さいごに
20代に入って編み物に夢中になったころは、編み物を中心に興味のあるハンドメイドのいろいろな分野に手を染めました。
でも、編んでいるときのリズム感と集中の度合いは編み物が一番で、これはクセになりました。
なぜだろうと考えたとき、毛糸の手触りかな?と。
それから素材の色彩にも敏感になりました。
特に一時期、編み込み模様ばかり編んでいたことがあったので。
毛糸によってはにおいもありますし、染料の薬品のにおいも。。
さすがに味覚はないけど、編む行為は五感に通じます。
編み物に癒し効果があるとするなら、編むことを楽しみながら自然に五感の感覚を引き出してくれることと関係があるのかもしれませんね。